猫は寒さが苦手です。
寒さによって体調を崩し、病を引き起こしてしまう場合も少なくありません。
そこで、本記事では、寒さによって猫がどのような病を起こしやすいのか、また愛猫の健康を守るための寒さ対策はどのようにすればよいかなど詳しく解説します。

寒さ対策の重要性と猫の体温管理
猫にとっての寒さ対策は、病気を防いで健康を守るためにも重要です。
特に、寒暖差には注意しなければなりません。
猫が快適に感じる温度は人間とそれほど違いはありません。
しかし、猫は温度差に弱いため、朝夕と気温の差が大きい場合は対策が必要です。
そのため、猫の寒さ対策の必要性と適温について、解説します。

寒さ対策の必要性と猫の適温について
猫の適温は、長毛種や短毛種のように毛のタイプや特性、筋肉量や体力などの個体差によって違いはありますが、おおむね20〜28℃です。
子猫や老猫、病気などで体力が落ちている場合などは、より寒さを感じやすいでしょう。
特に子猫の場合は体温の維持が難しく、体温低下による命の危険性も高いため、24℃前後の温度の維持が大切です。
湿度については、55℃前後を目安にしましょう。
また、猫にとっての寒さ対策は、猫が冬にかかりやすくなる次のような病気の対策にもなります。
- 関節炎
- 便秘
- 毛球症(もうきゅうしょう)
- 泌尿器系の病気
- 呼吸器系の病気
猫は寒さを苦手とするため、冬はコタツの中や暖房器具の前で丸くなっている姿をよく見かけるのではないでしょうか。
人間と同じように暖かい場所からなかなか動かず、運動不足になる傾向があるため、体重の増加・筋肉と体力の減少により、関節を痛める可能性があります。
また、運動量が減ることで胃腸の働きも鈍くなってしまうため、便秘になりやすい傾向があります。
毛球症(もうきゅうしょう)とは、胃や腸の中で飲み込んだ毛玉が大きくなり、毛の排出ができなくなっている状態です。
嘔吐や排泄で出せないため、便秘や嘔吐を繰り返し、食欲を無くしてしまうなどの症状が見られます。
場合によっては、腸閉塞になって手術が必要になったり、窒息してしまったりすることさえあるでしょう。
泌尿器系の病気とは寒さで運動量が減ると、水分を欲する回数も少なくなるため、尿も少なくなります。
冬でも脱水症状になる場合もあるため、注意が必要です。
さらに、水分が不足する状態が続いてしまうと、尿道に結石がつまったり、膀胱内で細菌が繁殖しやすくなることから膀胱炎になってしまったりする可能性もあるでしょう。
呼吸器系の病気とは、気温が下がり空気が乾燥する冬は、鼻やのどから細菌・ウィルスの侵入がしやすい状態です。
そのため、鼻の粘膜が炎症を起こす鼻炎や猫風邪、肺炎などの命にかかわる病気にまで発展してしまう可能性があります。
猫は痛みがある場合でも鳴くことなく、じっと我慢します。
そのため、愛猫がいつもより元気がない場合は、注意深く様子をみることが大切ですが、できるだけ早めに動物病院を受診すると安心でしょう。

内蔵器への影響と冬期の体温維持
猫は寒さだけでじっとしているとは限りません。
体温の低下は、内臓にも影響がでてくるため、体調が悪いことから動かずじっとしている場合があります。
内臓の冷えにより、血流が悪くなったり、腸の消化吸収能力が低下したりするため、前述したような病気を患う可能性が高くなります。
普段の様子よりもおとなしい場合は、食欲が落ちていないか、下痢や嘔吐していないかなど注意深く観察しましょう。
もしも、普段と違う様子がみられた場合は、かかりつけの獣医師に診てもらうことをおすすめします。

室内での保温対策とストレス管理
室内での保温対策としては、ヒーターなどの暖房器具の利用や、猫が寒さを感じた際に自分で移動して温まれる場所の設置が必要です。
ただし、人間が保温対策として良かれと思ってした行動により、猫がストレスを抱えてしまう場合があるため、室内に置いての適切な保温対策を解説します。

部屋の温度調節とヒーターの効果的な使い方
部屋の温度は、人間が過ごしやすいと感じられる温度であれば、猫も比較的快適に過ごせます。
そのため、部屋で上着を羽織る必要がある場合は、猫にも防寒対策が必要です。
多頭飼いの場合は、猫同士が寄り添い体を温められますが、一匹の場合は自分だけで温められる場所の用意をしましょう。
暖かい毛布や湯たんぽなどを用意したり、日の当たりやすい場所に移動したりなどしましょう。

快適な室温の維持とヒーターの利用方法
コタツの中や暖房器具の前にいることが多い猫ですが、火傷には注意が必要です。
愛猫が寒いだろうと、火事や火傷の危険性がある暖房器具をつけっぱなしにして家を開けないようにしましょう。
エアコンについては火傷や火事の心配がないことから、つけたまま外出する場合もありますが、非常に乾燥するため、水飲み場に飲み水をたっぷり用意しておくことが大切です。
家族と一緒に過ごす際にエアコンを使用する場合は、加湿器を併用することをおすすめします。
家に人がいる場合にヒーターなどを利用する際の温度は、人間が快適に感じる温度設定で問題ありません。
ただし、部屋が暑くなりすぎるような暖房器具の使い方はしないようにしましょう。
暑すぎる室温は猫にとって不快となり、ストレスとなります。
また、猫は気温が低い場合、ヒーターやストーブなど暖房器具に近づく距離が短くなっていきます。
愛猫が火傷するリスクを避けるためには、暖房器具のまわりにサークルを設置するなど工夫が必要です。
また、ケージなどに暖房器具を近づけ過ぎると、毛布などに引火する恐れもあるため、注意が必要です。

猫用防寒服の使用と寝床の重要性
猫は、体に取り付けられることをあまり好まないため、服を嫌がることは珍しくないでしょう。
猫用の防寒服は毛づくろいの妨げにもなることから、猫のストレスとなる場合があるため、防寒服を無理に着せる必要はありません。
また、深夜から早朝にかけて気温が大きく下がります。
冷気が入りやすい玄関近くや窓辺近くには、寝床を置かないようにしてください。
また、暖房機器を切った部屋でも寒さに震えることなく過ごせるように、寝床の防寒については次のような防寒服・ベッド・毛布などを用意しましょう。

防寒服の効果とベッド/毛布の重要性
ドーム型や筒状の冬用のベッドは、フワフワで柔らか、保温性に優れた素材でつくられています。
中にヒーターが設置されていたり、設置できるように設計されているタイプもありますが、ペット用グッズの湯たんぽと毛布をいれることで、電源の利用がなくても暖かさを保てます。
外出時は電源を使用するタイプの場合、電源コードを噛みちぎって感電する不安もあるため、電源を使用しない湯たんぽの使用がおすすめです。
電源を使用しない湯たんぽには、お湯を入れるタイプの他にも、電子レンジで温めるタイプや蓄熱式タイプなどがあります。
猫は寒くなれば自ら暖をとりにいくため、暖かい毛布を用意しておくことは大切です。
また、子猫や老猫は体温調整が難しいため、防寒服による保温もおすすめできます。
ただし、暖房器具と合わせての使用は暑くなりすぎる場合があるため、注意しましょう。

食事調整と冷え性対策
猫も冬場の気温低下により、冷えから体調を崩す場合があります。
ヒーターや毛布などにより、外側から温めることも大切ですが、食事によって体の内側から温めることも大切です。
そこで、冬場の食事と冷え症について解説します。

高脂肪餌の効果と冷え性のサイン
猫が寒さを感じている場合、主に次の5つのサインを見せます。
- 膝の上や家電の上など暖かい場所にいたがる
- 体を丸めてじっとしている
- 肉球が常に冷えている
- 水分摂取が少なくなる
- 下痢や便秘をしている
猫は高タンパク・高脂肪・低炭水化物の食事が理想ですが、エネルギーを作り出す非常に重要な脂質が不足してしまうと、活力がなくなり、どんどん痩せてしまう可能性があります。
また、脂質は硬い便をなめらかに排出しやすくするため、不足すると便秘にもなりやすいでしょう。
不足分を補うために高脂肪餌を選ぶことで、肥満になるのではとの不安もあります。
体重管理用の猫用療法食では、低脂質の餌をすすめられる場合も少なくありませんが、低脂質の餌を食べさせさえすれば痩せるわけではありません。
体重を減少させるためには、運動量や間食の量なども大きくかかわってきます。
そのため、高脂肪餌にしただけで肥満になるわけではありません。
冬場の寒い時期には、脂肪が多めについた猫の場合は体温が保ちやすく、病にかかり食事が十分にとれない際にも、体脂肪がエネルギー源として活用されるなどメリットにもなります。
そのため、高脂肪餌は、食が細く寒さに弱い猫種におすすめです。
猫によっては、高脂肪餌が体質的に合わずに下痢になる場合もあるため、注意しましょう。

食事による冷え性改善と対処方法
猫も人間と同じで、寒いときに冷たい食べ物や飲み物は体が冷えるため、あまり口にしようとしません。
そのため、冬場はご飯を温めてあげたり、温かいスープで不足しがちな水分をとらせてあげたりなど、食事によって体の内側から温めてあげましょう。
猫の舌の適温は、39℃前後です。
手で触れて少し温かさを感じるくらいが丁度良い温度といえます。
通常の飲み水も、常温か人肌ほどの温かさにすることで代謝がよくなり、冷えの改善につながるでしょう。

屋外と移動時の寒さ対策
愛猫を外に連れ出す場合は、通常のキャリーバックの中に普段使用しているお気に入りの毛布などをいれてあげましょう。
ただし、外からの冷気が入ってくるため、冬用のキャリーカバーや毛布などによりキャリーバックの外側を包んであげることで、防寒率があがります。
猫用の防寒服を着せてあげるのもおすすめですが、嫌がる場合は無理して着せる必要はないでしょう。
また、車で移動する際の温度や注意点、屋外猫の冬の暖房施設についても解説します。

屋外猫のための暖房施設と車内の温度管理
車で移動する際の車内の温度は、暑くなりすぎないようにしましょう。
人間が心地よくいられる温度であっても、暖房をいれた車内においては、しっかり防寒対策されたキャリーバックの中は暑く感じられる可能性があるため、注意が必要です。
暖房施設については、通気・防風・防寒・雨よけができる屋外用のキャットハウス・シェルターが販売されています。
しかし、大きめの発泡スチロールと段ボール、保温シートと毛布などを入れて手作りの暖房施設をつくることも可能です。
発泡スチロールの中に段ボールを重ねて入れ、段ボールの中に保温シートと毛布をいれて、
発泡スチロールに蓋をした状態で、猫が入れる入り口をつくれば完成です。
ただし、外に出した際に風でとばされないようにしましょう。

暖房施設の必要性と車内の温度調整の重要性
前述したとおり、車内においては、防寒対策をした状態のキャリーバッグの中は保温性が高い状態です。
そのため、車内では、キャリーカバーや毛布を外すなどの調整が必要です。
屋外猫は屋内で過ごしている猫に比べて、寒さに強く、外で暖をとれる場所を知っていますが、厳しい寒さの中では体力のない子猫や老猫は凍死してしまうこともあります。
そこで、暖房施設を設置して暖をとれる環境を用意することにより、飼い主と離れてしまった屋外猫などの凍死を少しでも防ぐことが可能です。

ヒートテックの活用と移動中の冷え対策
ホットカーペットにも勝るともいわれるヒートテックの毛布。
吸湿発熱と優れた保温機能を持ち、薄い生地にもかかわらず、抜群の暖かさです。
愛猫がトイレを我慢できず、キャリーバックの中で粗相をしてしまう可能性もあります。
しかし、ヒートテックの毛布は洗濯機で丸洗いができることも、おすすめポイントのひとつです。
愛猫用に1枚用意しておくと、室内利用だけではなく、寒さの厳しい日の移動時にも活躍します。
車内の温度とキャリーバッグ内の環境に注意しながら、車内でも愛猫と快適に過ごしましょう。

防寒用品の効果とその活用方法
猫の寒さ対策としては、室内ではエアコンやヒーターなど人間と共に使用する暖房機器を利用したり、次のようなペット用の防寒器具を利用したりします。
- ヒートテックなどの毛布
- 湯たんぽ
- ペット用ヒーター
- ペット用防寒服
- 冬用ベッド
猫は、寒くなると、自ら暖かい場所に移動します。
そのため、愛猫をお留守番させる際は、火傷や火事にならないような環境で暖をとれる場所を用意してあげましょう。
また、体の中から温められるように、愛猫のご飯も温かいものを用意してあげることをおすすめします。
通常の飲み水も、常温や人肌ほどに温かくしてあげると代謝もよくなるでしょう。
さらに、寒さを乗り切れるエネルギーをつくれるように、高タンパク質や高脂質をしっかりとりながら低炭水化物にすることで、バランスよく栄養をとらせることが大切です。
体の外と内から、しっかり愛猫の防寒対策をして、愛猫の健康を守りましょう。
